胃潰瘍

胃潰瘍とは

胃潰瘍胃壁が何らかの原因で深く傷ついている状態です。
胃底腺から分泌された胃酸の作用によって起こる消化性潰瘍は、胃潰瘍の原因の中でも代表的存在にあたります。一昔前では、ピロリ菌による胃潰瘍が多かったのですが、現在その症例は減りつつあります。
しかし、お薬が原因で起こる胃潰瘍は増加傾向にあります。このページでは、胃潰瘍の症状や原因、治療、胃がんとの関係性などについても解説していきます。

胃潰瘍の症状

みぞおちを中心とした鋭い痛みが特徴です。他にも、吐き気や嘔吐、げっぷ、胸焼け、食欲不振などを伴うこともあります。
悪化して胃の血管が切れると、吐血や下血(黒色便)を起こす恐れもあります。出血が長引くと、貧血や血圧低下、ショックに至る危険性もあります。

胃潰瘍の原因

ピロリ菌の感染やNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、低用量アスピリン、ビスホスホネート系薬剤の服用などによって起こります。また加齢に伴って発症率が高くなる傾向もあります。この傾向は、ピロリ菌の感染率とほぼ一致すると指摘されています。
現在は色々な基礎疾患を抱える高齢者が増えた影響か、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)や低用量アスピリンをによる胃潰瘍が増えています。胃液は食べたものの消化や病原菌の殺菌といった役割を担っているのですが、胃の粘膜を傷つけることもあります。

また胃粘液は、胃液などの刺激から胃の粘膜を守ることで、粘膜障害を防いでいます。さらに、重炭酸分泌や粘膜血流、プロスタグランジンなどといった、胃粘膜保護作用を示す防御因子によって胃は守られています。
1961年より胃潰瘍は攻撃因子(酸やペプシンなど)と防御因子(粘液血流など)のバランスの乱れによって起こるのではないかと考えられてきました。「攻撃因子と防御因子とのバランスが保たれている時は潰瘍が発生しないが、バランスが乱れると潰瘍ができる」という説です。ピロリ菌時代の現在でも支持されている概念です。

ピロリ菌感染によって、胃粘膜に活動性胃炎や萎縮性胃炎を起こし、弱った粘膜部分に遺産やストレス負荷によって潰瘍が発症すると考えられています。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などはプロスタグランジン合成における酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX-1、COX-2)を抑制し抗炎症作用を示す薬剤です。プロスタグランジンは胃粘膜防御に関与しており、NSAIDsによりプロスタグランジンの合成が阻害され、防御機構が制限され胃粘膜障害を引き起こします。
ストレスも誘因の一つとして考えられています。単独のみで潰瘍を発症することは稀で、
「ピロリ菌感染にストレスが加わることで、胃潰瘍が発症したのではないか」という説が有力とされています。

ピロリ菌起因性潰瘍

胃潰瘍ピロリ菌は、胃の中に棲むグラム陰性桿菌です。昔は上下水道など衛生環境が今よりも良くなかったため、井戸水などから感染したと考えられています。現在では、家族内感染・母子感染によって起こるケースがほとんどです。
胃潰瘍患者の80~90%はピロリ菌陽性です。これは、ピロリ菌が生成されるアンモニアやサイトカインなどの粘膜障害作用によって、胃潰瘍が引き起こされたのではないかとされています。

NSAIDs潰瘍

エヌセイズ解熱剤として用いられるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、ピロリ感染の次に見られる原因です。NSAIDs潰瘍は、胃の幽門部から前庭部によく起こり、無症状の多発潰瘍であることが多い傾向にあります。
NSAIDsにはシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用を介して、胃粘膜の防御因子の中でもかなり重要なプロスタグランジンの生合成を抑える効果を持っています。この働きによって、胃潰瘍が起こりやすくなるのです。

non-NSAIDs、non-ピロリ潰瘍(ストレスなどによる胃潰瘍)

ストレス加齢や疾患、ストレスなどが引き金となって、胃潰瘍を引き起こすケースもあります。酸分泌能の亢進や高ガストリン血症、胃排泄能の亢進なども関わっているとされています。以前はピロリ菌による胃潰瘍の方が多かったため、突発性胃潰瘍の割合はたったの1%程度でした。しかし現代ではピロリ感染率が下がっているため、特発性胃潰瘍の割合が増えるのではないかと予測されています。

 

胃潰瘍の検査

 

胃カメラ胃潰瘍の可能性が高い方にはまず、胃カメラ検査を受けていただきます。胃カメラで潰瘍の有無を確かめ、症状の原因を探ります。
胃潰瘍がみられた場合は、胃酸分泌を抑える薬を処方します。
出血が続く場合は、内視鏡で止血処置を行います。

胃潰瘍の治療

薬物治療で治癒できるケースがほとんどです。
治療ではよく、胃酸分泌の最終段階(プロトンポンプ)を阻害する「プロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitor:PPI)」が使われます。PPIの胃潰瘍の治癒率は80~90%とかなり高めで、PPIを使っても治らない難治性の胃潰瘍はほとんど見かけません。
近年ではPPIではなく、より胃酸抑制効果を強くしたP-CABが処方されるようになっています。また、胃潰瘍はピロリ菌感染によって起こるケースが多いので、ピロリ菌感染検査も受けていただきます。
陽性判定が出た場合は、除菌治療も行います。

ピロリ菌と胃がんの関係

ピロリ菌は、胃がんの原因の大半を占めているものです。
実際に胃がんの方の99%は、ピロリ菌検査で陽性だったと指摘されています。
このことから「ピロリ菌陽性=胃がんリスクが高い」と分かります。ピロリ菌陽性の方は除菌治療を受け、胃潰瘍と胃がんのリスクを軽減させましょう。

胃の症状はお早めにご相談ください

現在ではドラッグストアでも、「ガスター10(H2 blocker)」などの胃薬が購入できるようになっています。
これらの薬も症状の改善に期待できるのですが、ピロリ菌感染による胃潰瘍を根治させることはできません。
辛い時はあまり市販薬に頼らずに、医療機関へ受診しましょう。

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